その4

2004年6月16日
窓の外には長太郎・・・
ゆずるの頭の中は一瞬真っ白になっていた。
今まで長太郎は学校に行ってるものとばかり思っていた。そろそろ朝練が始まる時間だし部室にいるものだと・・・
しかしなぜか長太郎はここにいる。
そう思ったら自然に身体が動いていた。
部屋から飛び出し階段を駆け下りると玄関の扉を開ける。

その頃長太郎はというと、いきなり窓越しから居なくなってしまった事に困惑し、きっとこんな事をしたの俺を彼女は怒ってるんだ・・・そう思い帰りかけようとしたその瞬間、玄関の重い扉が「ガチャッ」と開く音がした。
長太郎が振り返るとそこにはパジャマ姿のゆずるの姿があった。
しかしもう少ししたら倒れそうな位顔は青ざめていた。驚いた長太郎は慌ててゆずるに近寄る。

「外に出ちゃ駄目ですよ!」

ゆずるは声が出ないので身振り手振りで長太郎に何かを訴えている。しかし何を言っているのか聞き取ることは出来なかった。

「な・・・・・・あ・・・ゴホッゴホッ・・・」
「無理しちゃ駄目です。って俺が悪いんだよね、会いたいなんて言わなきゃよかった・・・ゴメン」

長太郎はゆずるを優しく包み込むように抱きしめる。
ゆずるは長太郎の胸の中で首を横に振り微笑んでいた。

すると突然ゆずるは携帯を取り出し何かを打ち始めた。
暫くすると長太郎の携帯が鳴る。メールだ。
声が出なくて会話が出来ない今、この方法以外話す手段がない。

 [今日朝練は?」

長太郎が答える。

「すいません、サボりました」

また携帯が鳴る。

 [なんでココに来たの?]

「どうしても君に会いたくて・・・」
    ・
    ・
    ・ 
    ・
    ・
 [やっぱり今日帰りに寄ってくれる?]

「えっ!でも・・・」

 [ダメ?]

声が出ない分ゆずるは目で訴える。そのなんとも悲しそうな顔を見たら誰が嫌と言えるだろうか・・・

「分かった。部活終わったらお見舞いに来ます。それまでちゃんと寝ててくださいね!」

うなずくゆずるの髪を優しく撫でる。
そして最後にもうひとつメールが・・・

[長太郎・・・時間平気?]

「えっ・・・・・・・あ〜〜〜〜!!」

この後長太郎は慌てて学校へと走っていったのだった。

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